「まず貸与による借金を懸念しました。法科大学院だけでなく、大学のころから奨学金を借りていたため、さらに借金をしたときの返済額を考えると…。また就職難では明るい未来を感じることができません」こんな無念の思いを寄せたのは、3回目の新司法試験で合格したビギナーズ・ネットの会員です。弁護士をあきらめ、4月から公務員として働くといいます。
こうした背景の一つには、今年度の司法修習生から始まった貸与制の導入があります。修習の1年間、専念義務があるためアルバイト禁止となっています。これまでは、この期間の生活費用として、国から給与(給費)が支給されてきました。この給費制が昨年11月で廃止。国が修習生に生活費を貸す貸与制が始まりました。
日本弁護士連合会(日弁連)が2010年に行ったアンケートでは、司法修習生の53%が法科大学院の学費などで、平均318万円の借金を背負っていることが分かっています。給費制が廃止になったことで、貸与制で借りる300万円ほどが加わることになります。
さらに弁護士の就職難も影を落としています。昨年12月に修習を終えた新64期修習生は1991人。報道などによると、昨年12月15日時点で、1423人が弁護士登録し、170人ほどが判事と検事になりました。しかし残り400人(21・9%)が弁護士登録をしておらず、過去最悪の結果となっています。その前年の同時期と比べると倍増しており、就職難の深刻化がうかがえます。