「賭けトランプで15万円の借用書を書かされていた」「賭けトランプはすべてイカサマ」「携帯電話には自殺当日、加害者から20件の着信履歴」――。これだけの「事実」があるのに、府警は当初、立証困難と判断していた。滋賀・大津市のいじめ事件の時と同じ展開である。
「警察はいじめ事件の捜査に消極的です。好意的に見れば、民事不介入の“原則”に加え、教育現場で強権を発動することへの配慮からです。警察はこれまで、学校や市教委の“告発”があってから、刑事事件として動くのが慣例でした」(警察ジャーナリスト)
被害者が亡くなっている場合、警察の態度はさらに硬化するという。事実関係のウラを取るのが難しく、遊びなのか、いじめなのかの判断が難しいからだ。しかし、貝塚市のケースでは、自殺した川岸さんが持っていた携帯電話に、加害者の実名と「お金が払えない」といったメッセージも残っていた。少し調べれば、川岸さんがムリヤリ借金をさせられ、恐喝されていたことは明らかだ。
元警視庁刑事の北芝健氏はこう言う。
「いじめに限らず、ストーカー事件や家庭内暴力の問題でも、警察の対応は鈍い。理由は複数ありますが、まず、今の警察は目先の事件の検挙率を上げることに手いっぱいで、新たな相談(事件)に対応する余裕がありません。市民のための警察という意識も希薄になっており、相談内容が切迫しているのか、違うのか――の判断もつかなくなっている」
コトの重大さに気付かないから、メディアがちょっと騒ぐと、慌てて「再捜査」となるのだ。これじゃあ、今後も“いじめ殺人”は続く。そのたびに警察の「再捜査」が繰り返される。フザけた話だ。
「『110番通報』することが大事です。地元の警察に直接、相談に行ったり、電話したりすると“事なかれ”で、ウヤムヤになりかねません。『110番』は相談内容や、その後の対応について報告義務がある上、地元だけではなく、地域の警察すべてに相談内容が明らかにされるため曖昧にできません」(前出の北芝氏)
「警察に相談すれば何とかしてくれる」というのは錯覚なのである。