この日銀のデフレ政策によって、国民の所得は急減し、若者の就労機会は奪われ、日本経済は「萎縮」していきました。それなのに日経新聞は、日銀に百パーセント迎合してきたのです。それは国民の目線で政策をチェックするメディアの責任の放棄です。
昨年7月に、日銀副総裁が部下とともに産経本社を訪れました。その時、「日銀は金融緩和を十分実施しているので、ご理解賜りたい」と言って、分厚い資料を置いていきました。
それを読むと、日銀が自己弁護のために統計を組み合わせていることが一目瞭然でした。例えば金融緩和の規模を示す日銀が供給する資金量については、なぜかGDPで割った値にして、日銀は世界一、金融緩和を行っていると説明しています。資金量の変化だけを比較したら日本が先進国で最低なのが一目瞭然なので分母をつけたわけです。
そもそも日銀の金融緩和が不十分だから、日本のGDPは縮小しています。縮小したGDPを分母に乗せて割れば、値は大きくなるに決まっています。
だが、日銀によって「刷り込まれた」日経新聞の記者たちは、まるで皇居のお堀端のカルガモのヒナよろしく、日銀官僚たちに誘導されて、何の疑いもなく隊列をなして従順に付き従うのです。
◇どうしても消費税を上げたい
日経新聞はまた、財務省の広報紙のような役割を引き受けています。'11年3月に東日本大震災が起こると、同年5月23日付日経「経済教室」に、「震災復興政策経済学者が共同提言」という題で消費増税を促しました。「消費税は生産意欲を減退させにくく、経済成長に与える影響が軽微である」という詭弁を弄して、その正当性を説いています。
そこには、消費増税がもたらすデフレに対する影響については触れていません。ちなみにこの提言を行った二人の経済学者は、財務省御用達の学者です。
同年夏に、「税と社会保障の一体改革についてご説明に上がりたい」と言って、主税局幹部を中心とした5人の財務官僚が、産経新聞本社にやってきました。その時、「現行5%の消費税率を10%にしたら税収も倍になります」と、小学生でも分かるような試算に基づく説明をしてきました。
私は「日本はデフレとともに税収が減っており、増税によってデフレがさらに進むのだから、税収も減るのではないですか?」と質問しました。実際、消費税率を3%から5%に引き上げた時、税収は減っています。
すると財務官僚たちは、「東大を始めとする高名な経済学者たちはそのような見解は持っていません」と反論しました。「高名な経済学者」とはすなわち、「御用学者」たちのことです。
'14年4月からの消費税8%、翌年10月からの10%への引き上げを、日経新聞は継続して主張し、この3月24日の社説では「消費増税の価格転嫁促す環境を整えよ」とせき立てました。経済新聞なら自由な経済活動にお上が権限を増やして口うるさく干渉することに反対するべきなのに、民間を取り締まれと言うのです。
本来増税というのは、デフレを脱却し、国の経済が成長軌道に乗ってから行うべきものです。実際、安倍首相は、昨年9月の自民党総裁選で「デフレが続いているなら(消費税率を)上げるべきではない」と強調していました。
いまのアベノミクスの円安株高は、脱デフレの必要条件でしかありません。財政出動を行い、消費増税を延期するなどして、初めて適度なインフレを伴う成長軌道が見えてくるのです。
日経論調に従えば、アベノミクスが破壊されるでしょう。安倍首相には時代の要請に応えた適切な経済政策を取ってほしいと思います。
日経新聞の与太記事をまともに受け取っている者など居ない
日経新聞でまともに読めるのは土日の書評と芸術関係だけ
その他は古紙同然