<外国のリポートは危険性を指摘>
米エネルギー省が17日、「シェールガス」を含む液化天然ガス(LNG)の日本への輸出を解禁した。2017年にも、中部電力と大阪ガス向けに米国産LNGを年計440万トン輸出する見通しだ。
このニュースに、茂木経産相は「大歓迎」と喜び、大マスコミも「割安な天然ガスの輸入に道が開けたことは朗報」(毎日新聞)などと歓迎しているが、本当に手放しで喜ぶような話なのか。どうもキナ臭いのだ。
米国事情に詳しい東海東京証券チーフエコノミストの斎藤満氏はこう言う。
「米国内では、供給過多で100万BTU(英国熱量単位)あたりの価格は、生産側に採算が取れなくなるほど下落してしまった。そこで、輸出を認めることにしたのです。本来はFTAを結んでいる国にしか売らないはずでしたが、TPP交渉参加を表明したことで日本にも売るという。日本なら言い値で買ってくれるからでしょう。米国内で4ドルのコストで採れるシェールガスが日本では15ドルで売れる。もちろん、輸出のための液化コストなどが上乗せされるわけですが、それにしたって、日本は足元を見られているのですよ」
現在、日本がカタールから輸入しているLNG価格が16〜18ドルだから、米国産シェールガスは大して割安ではない。それに、天然ガスの産出国は他にもある。17年まで待たずとも、カナダやロシア、オーストラリアなどから、もっと安価で輸入できる可能性もある。
それだけではない。発売中の「世界」6月号に掲載されている論文は衝撃的だ。フランスの知識人向け月刊誌「ル・モンド・ディプロマティーク」の記事を邦訳したものだが、「シェールガスという大いなる欺瞞」のタイトルで、シェールガス革命は「投機的バブルに過ぎない」と断じている。
シェールガスは、掘削当初こそ相当量を生産できるが、産出量が急激に減る。枯渇のペースが異様に速いのだという。
<飛びついている日本政府と商社の驚くべき無知蒙昧を警告>
生産者が安定的な収益を確保するためには、同じ鉱区で毎年1000近くもの新規ガス田を掘削しなければならず、そのためには年間100億ドル以上の費用がかかる。米国全体で考えれば、08年の金融危機を救うために投じられた以上のカネがかかるのである。生産者は借金をしまくり、夢を売る。そこには投機マネーも集まってくるが、“商品”にそれほどの価値はない。論文は、こう警告するのだ。
〈為政者たちは2008年の危機からほとんど何も学んでいない。化石エネルギーの部門でも再び同じ過ちを繰り返そうとしている〉
ニューヨーク・タイムズ紙は11年6月の段階で、シェールガス・ブームに疑義を呈する地質学者や市場アナリストの声を集め、「開発の生産性と埋蔵量について、意図的かつ不正に過大評価している」と報じた。
それなのに、みんなが「夢のエネルギー」に飛びついてありがたがっているのは、輸送のための港湾設備や超低温ポンプ、貯蔵タンク、再気化などで一部の大手企業に巨大な利権と商機があるからだ。このブームは怪しく、危険だ。