中国は、わが国固有の領土である尖閣諸島に対して、領海侵入を頻繁に繰り返し、さらに無人機による防空識別圏飛行まで企てている。こうした中国の国境戦略は、いわゆる「サラミ法」だ。サラミソーセージを丸ごと1本盗むとすぐわかるが、いろいろなサラミソーセージから少しずつスライスして合計1本分にすると盗んだことがわかりにくい。毎日毎日小さな出来事を繰り返して、いつの間にか有利な立場にするという戦法のことだ。
ただし、中国船籍の領海侵入と無人機の領空侵入とは全く異なる。領海侵入は直ちに領海侵犯とはいえないが、領空侵入は直ちに領空侵犯となるからだ。たとえてみれば、サラミソーセージのスライス1枚とスライス数枚の差である。無人機が領空に侵入した場合、防衛省は撃墜についても検討しているというのは、基本的には正しい対応だ。
さらにいえば、相手がサラミ法で来るときには、その対応もサラミ法がいい。領海侵入に対して、常時対応しているうちに、海上保安庁の船舶が尖閣周辺に常時駐留することを既成事実化させることもできる。
その一方で、外交チャンネルは閉ざしてはいけない。トップレベルでなくても、対中国との実務者連絡は水面下で頻繁に行ったほうがいい。対中国の2国間だけではなく、多国間のマルチでも同じで、外交的にはいつも日本は開放しているというスタンスが重要だ
実は、日中韓首脳会談も5月末に予定されていたが流れた。日中韓首脳会談は2008年に日本で第1回を開催して以降、3カ国が順番にホストを務める形で毎年開いてきた。今回は6回目で、韓国がホスト国だ。日中韓でそれぞれ新体制が発足したので、3カ国首脳が就任後初めて顔を合わせる場となるはずだった。
3月中旬、ホスト国の韓国は5月末の日程を日中両国に打診し、日本側は受ける考えを伝えていた。ところが中国が応じなかった。ここは、韓国をプッシュして、日本はいつでも会談に応じるというスタンスを国際社会に対しても見せる必要がある。日本は誠実でフェアな国なので、その印象を広く世界にアピールすべきだ。
10月7、8日、インドネシアのバリ島でアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開かれる。昨年は、尖閣問題もあり非公式会談であったが、今年は日本側から正式会談を申し入れるのもいい。それに中国がどう対応するか。外交では常に相手側にボールがあるようにしておくほうがいい。
なお、外交チャンネルといっても、政治家同士の形式張ったものでなくてもいい。かつてのピンポン外交のようなスポーツ関連は、領土や歴史問題を避けることができるのでいい。