「少々問題が起きても、市場に任せた方がいいと思うか」、という質問をした国際比較のアンケートがあります。多くの国では8割程度の人がその方がいいと答えていますが、日本でyesと答えるのは4割程度にとどまります。
硬直化した国の在り方から脱却しなければいけないと考える人も増えてはいますが、新しいルールを作る際には国に頼ることが多く、業界で自主ルールを作ればいいというようなことでも、業界は自分たちでまとめられず、役所に相談してくるというのは、よくある話です。
変わりつつあるけれど、お上志向から抜けきれない。それは政府主導の明治維新が成功したことの証でもあるのですが、実はそれは、「川をのぼる」(歴史に学ぶ)ことはできていても、「海を渡る」(世界を知る)ということができていないともいえます。
岩倉使節団は、ドイツでビスマルクに出会いました。ビスマルクは弱小国プロイセンを率いてドイツ帝国を築いた立役者です。フランスやイギリスに追いつくために改革したということを知り、日本もそれに倣う必要があることを認識しました。つまり、当時は世界を見ていたのです。
しかし今は世界を見るという意識が希薄であり、お上志向が強いという国民性に気付いていないようにも思います。
民主主義を勝ち取った国と、急に与えられた国との差はあるのかもしれません。イギリスはブルジョアジーが自分たちの手で国王から権利を市民革命によって引き出した。アメリカは自分たちがゼロから築いた。日本は敗戦によって突然民主主義を与えられたのですから、民主主義が成熟しないのは、歴史によるともいえます。
歴史的な出来事、とくに海外からの影響によって起きた歴史的出来事に、石油危機がありました。第四次中東戦争が起き、OPECが原油価格を四倍に引き上げたのです。
その前夜、1960年代に日本は高度成長を謳歌します。当時から、一部の専門家は、中東だけに頼っていると、戦争が起きたときに原油価格は危ういものになるという可能性を指摘しており、「石油危機 今度こそ狼はやってくる」という論文もありました。しかし、しばらくは何も起こらず危機感を持つ人は少なかった。中国でいつかバブルが崩壊すると言われながら、なかなかしないのと似ています。
そして73年、狼はやってきました。日本は目の前が真っ暗になります。石油は一気に4倍になり、生産は低下し、物価は上昇する。不況とインフレが同時にやってきたのです。
そこで日本は、耐え忍ぶという日本の強さを発揮しました。石油を節約する技術を作り、工場はその技術を取り入れる。政府は省エネ投資に政策金をつける、減税するといった支援をし、一丸となって危機に立ち向かいます。
気が付いてみると、日本は世界に冠たる省エネの国になり、環境国家になるのです。アメリカのように石油が採掘できず、西ドイツのように石炭があるわけでもなかった。最も大きな衝撃を受けたことで、日本は資源に乏しいという弱みを、省エネルギーという強さに変えたのです。
海外から、日本はレジリエントな国と言われています。レジリエンスとは、復元力という意味です。
阪神淡路大震災のあと、プロ野球のオリックスブルーウェーブは「がんばろう神戸」と謳い、東日本大震災のあとは、「がんばろう日本」というフレーズを多くの人が口にしました。
東日本大震災の際、Twitterに、「電車に乗っていたら、大変なことが起きていますが、こういう時こそがんばりどころです、みんなで力を合わせて乗り切りましょう、というアナウンスが流れて感動した」という内容のつぶやきが流れました。そういうスピリットが出てくるのです。
MITメディアラボ(米国マサチューセッツ工科大学の研究所)では、アフターインターネットの時代で、パラダイムが変わってきた、価値観が変わったということをいくつか言葉で表していますが、その中に、「レジリエンス・オーバー・ストレングス/強さよりも復元力が大事だ」、という言葉があります。強い会社だって潰れることがある、それを復元する力が大切なのです。
大震災でもそうです。復元力が重要であり、日本は復元力そのものといってもいい。それが日本の素晴らしさです。
今起きている現象の多くは、歴史の中からその要因、成り立ちを探ることができます。それを知ることが、これからどうすべきかを考える礎になります。
東日本大震災の際、Twitterに、「電車に乗っていたら、大変なことが起きていますが、こういう時こそがんばりどころです、みんなで力を合わせて乗り切りましょう、というアナウンスが流れて感動した」という内容のつぶやきが流れました。そういうスピリットが出てくるのです。
MITメディアラボ(米国マサチューセッツ工科大学の研究所)では、アフターインターネットの時代で、パラダイムが変わってきた、価値観が変わったということをいくつか言葉で表していますが、その中に、「レジリエンス・オーバー・ストレングス/強さよりも復元力が大事だ」、という言葉があります。強い会社だって潰れることがある、それを復元する力が大切なのです。
大震災でもそうです。復元力が重要であり、日本は復元力そのものといってもいい。それが日本の素晴らしさです。