鮭の養殖場が海の水を汚染する理由は、いくつかあるそうです。
1つ目は、鮭のエサ。
鮭のエサは、他の魚を粉にしたものを、ペレットにしたものだそうです。(鮭を1キロ太らせるために、4キロの魚が必要だそう。普通、市場に売られる鮭は、4.5キロ〜5キロなので、18キロ〜20キロの魚が必要ということになります)良心的な会社は、きちんと、魚をエサにしているそうですが、それは、コストがかかる。そこで、鶏肉、牛肉、鮭などを冷凍して販売しているある会社は、鶏肉をパッキングした後の残骸を鮭のエサにし、鮭をパッキングした残骸を牛のエサにし、牛肉をパッキングした残骸を鶏のエサにしているのだそうです!!!(それを聞いてから、私たちは、養殖の鮭を食べるのをやめてしまいました。)
鮭は、もちろん、ケージに入れられているので、鮭に与えられたエサの残りや鮭の糞は、すべて、海に流れていきます。そのせいで、海の栄養度が極端に上がってしまい(富栄養化)、赤潮の原因になります。
今年は、特にエルニーニョの影響で海水の温度が上がり、紫外線が強くなり、夏が長く続いたので、チリの海岸で赤潮が大発生し、鮭が大量に死にました。鮭だけでなく、もちろん、他の魚も、何キロにもわたって死骸がビーチに打ち上げられました。貝類、海鳥、鯨なども、死骸が打ち上げられました。死んだ鮭は、2500万匹!どれぐらいの量なのか、想像がつきませんが、死んだ鮭はどうしたかというと、30パーセントは埋められ、70パーセント(約1750万匹)は、チロエ島(鮭の養殖場がたくさんある)の130キロメートル沖合いの海に捨てられたそうです。
2つ目は、寄生虫を殺す殺虫剤。
鮭は、もともとは、ノルウェー、アラスカ、日本の北海道沖などにいる魚。もともと、チリには生息していませんでした。JICAで働いていた人に聞いたところ、1970年代にJICAがチリに鮭の養殖の技術を持ち込んだそうです。
そのために、チリで養殖されている鮭には、チリの海にもともといる寄生虫に対する免疫がありません。そこで、養殖場では、この寄生虫を殺すために殺虫剤を使います。これが、また、海へ流れていきます。この寄生虫は、カニや海老と同じ甲殻類なので、寄生虫を殺すために使われる薬は、カニや海老も殺してしまうそうです。
ちなみに、このタイプの寄生虫は、ノルウェー、アラスカなどにはいないので、殺虫剤を使う必要はないとのことです。
3つ目は、抗生物質。
そんなわけで、免疫の低いチリの鮭が、病気にならず、市場に出るサイズに育てるためには、抗生物質が必要です。「チリ産の鮭は薬漬けなんだよ」と友人。もちろん、抗生物質も、海に流れていきます。
2015年にチリの養殖場で使われた抗生物質の量は、2013年に比べて25%増。2014年のデータによると、ノルウェーで生産された鮭は、年間130万トン、使用された抗生物質の量は、972キロ!それに比べて、チリで生産された鮭は、年間89万5000トン、使用された抗生物質の量は、なんと、56万3200キロ!!!驚きの数値です。
鮭の養殖場の周りが汚染されて、もともといた魚介類が取れなくなっているという話は、以前にも聞いたことがありました。鮭の養殖は、外資の会社、いわゆる大企業が独占しているので、昔から漁業をしてきた地元の漁師さんたちの漁獲量と収入は減っています。
鮭の養殖場や加工工場ができれば、そこに働きに行って、収入を得ることはできますが、今年のように、大規模な赤潮で鮭が大量死すれば、養殖場も工場も閉鎖され、仕事を失い、赤潮で魚や貝も汚染されてしまうので(有毒プランクトンを食べた貝や魚などを本の少しでも食べると人間も死んでしまうんだそうです)、それを採って食べることも、売ってお金を稼ぐこともできません(チロエ島の人たちにとっては、海に潜って魚介類を採って売るのも大切な収入源)。実際、大量に鮭が死んだチロエ島では、多くの人が職を失い、食べ物を失い、海を失い、島中の人が団結して、港を閉鎖して、抗議しています。
スーパーや回転すしのサーモン
私は決して食べません
フクシマ産の農作物と同様です