捜査を指揮した府警曽根崎署によると、女優役の女には、風俗店での勤務経験があった。が、AV女優ではない。同署の調べに対し、女はこう言い放ったという。
「私の仕事は早く男性をいかせること」
撮影本番。女は手や口を使っては早々に男性を果てさせ、性行為を続けられないように仕向けた。
この時点で撮影はいったん止まり、犯行メンバーは男性にシャワーを促した。男性は従い、つかの間の休息を取ったが、依然、体力は回復しない。無言のプレッシャーを感じたのかもしれない。
「これ以上、演技はできません…」。男性が伝えると、男らは声を荒らげるわけでもなく、交わした契約書をかざし、違約金を請求。うろたえる男性に対し、消費者金融から金を借りて支払うようすすめた。
男性は男らに付き添われながら、歩いて約600メートル離れたビルの消費者金融の出張所まで向かう。しかし、出張所のATM(現金自動預払機)前で意を決して110番。事件が明るみに出た。
カメラマン役の男は捜査段階で「大阪を中心に名古屋や横浜などで計100件近くやった」と供述。うち30〜40件で応募してきた男性から現金をだまし取ったという。
首謀者の男は知人の男(26)に女優役を紹介してもらい、監督役以下、現場班に撮影を取り仕切らせる。そして、性行為をできなくすると、男性が「おかしい」と申し立てにくいような雰囲気を醸し出す。
「今日1日の利益。銀行いこ。」(原文ママ)
首謀者の男本人のものとされる簡易投稿サイト「ツイッター」。財布に入りきらないほどの札束の写真とともにつぶやきがアップされている。男性心理につけ込んで得た“利益”が含まれていてもおかしくない。
AV詐欺について、犯罪ではないかと気乗りしない仲間に対し、「弁護士にも話をしているから大丈夫」と豪語していたという男。一方、大阪市内で別事件を起こし、昨年8月にわいせつ目的略取や強盗などの容疑で自身が逮捕されていたのだから、しゃれにもならない。
府警によると、AV詐欺で使われた偽の契約書は、男が犯したわいせつ・強盗事件の関係先を家宅捜索した際に見つかったという。
あくまで偽物だが、契約書によれば、男優役が演じきった場合は謝礼として日当1万円が出るらしい。ただ、実際に支払われたケースは確認できていない。
「女優役のテクニックがすごかったのか」(捜査関係者)。