「ネットなんて見ないけど、まったくの事実無根。コメントする立場にありません!」
“都議会のドン”の事務所はカンカンになって一方的に電話を切った。怒りの矛先は元都知事の衝撃の告発である。
ニュースサイト「News Picks」は13日夜、〈猪瀬直樹が語る「東京のガン」〉と題したインタビュー記事を掲載。2011年7月に自民都議が“ドン”のいじめに遭い、自殺に追い込まれた――という内容だ。猪瀬氏が爆弾発言を炸裂させた。
名指しで攻撃されたのは自民の内田茂都議(77)。05年から都連幹事長に君臨する“ドン”だ。自殺した都議とは当時、葛飾区選出の樺山卓司氏(享年63)。5期務めたベテランだった。
猪瀬氏はこれが証拠とばかりにインタビュー記事の掲載に合わせ、自身のツイッターに樺山氏の「遺書」を投稿(写真左)。「父は憤死した」と連絡してきた娘にみせてもらったという。〈人間性のひとかけらもない内田茂。来世では必ず報服(ママ)します!〉などと壮絶な殴り書きが確認できるが、当時から都議会の一部では“抗議の自殺”と囁かれていた。
「当時は民主党政権下で、都議会の議席は与野党拮抗。自民は民主都議を激しく切り崩し、11年4月の補選の結果、民主所属の議長を除けば、野党をようやく1議席上回った。その直後に樺山氏が命を絶って、再び野党に実質的な過半数を奪い返されたのです」
多数派工作を担ったのは内田氏だ。落選中も都連幹事長に居座る“ドン”に「現職じゃないクセに」と、不快感を覚える同僚もいたという。
自殺から5年。恨みをつづった遺書の噂はくすぶっていたが、まさか、かつての東京都のトップが暴露するとは……。猪瀬氏は自殺の経緯を「学校のいじめ」に例え、〈都議会議員の集まりの中で嫌がらせ的に罵倒されたり、議長になれたのにならせてもらえなかったり、ギリギリといじめ抜かれた〉と語った。
都知事選の告示前日の自民党都連への“爆弾投下”は敵対する小池百合子を大いに喜ばせただろう。インタビューでも小池氏に「期待したい」とエールを送った猪瀬氏は、徳洲会5000万円事件で公民権停止中の身だ。小池氏が都知事になっても副知事などの公職には就けない。“ドン降ろし”のためなら無償ボランティアも覚悟か。
地方政治は、特に、ごね得の世界。
自分の主張を言って、通らなければ拗ねて、声を荒げて押し通し、人の足を引っ張り始めて、最後は、罵倒し、恫喝する。
そんなことがまかり通るのは、評価権限を持つのが、組織外部の有権者ゆえ。外づらさえ良ければ、選挙に当選し、期数を重ね、こんな歪んだ権限が増長されていく。国政のように風にも流されない。
期数の若い議員で、先を考える人達は、それを見て見ぬ振りをしながら、台風が通り過ぎるのを待つつもりで、知らぬうちに牙を抜かれていく。