ますますクルマ離れが進むかもしれない。2023年1月に自動車検査証(車検証)の電子化が開始することに伴い、政府は10月28日、「道路運送車両法関係手数料令の一部を改正する政令」を閣議決定した。これにより、自動車の新規検査などで国または軽自動車検査協会に納付する手数料が23年1月に値上がりする。
例えば、車検証の再交付申請手数料が350円(従来は300円、以下同)に、新規検査において完成検査終了証提出がある場合、小型二輪自動車の手数料は1400円(1100円)、軽自動車の窓口申請が1500円(1100円)に値上がりする。
もちろん、利便性も高まる。車検証の電子化に合わせて、更新事務を運輸支局長などが一定の要件を備える者(自動車整備事業者や行政書士)へ委託する制度を導入する。これにより、これまでは車検証の更新などの際、運輸支局まで足を運ぶ必要があったのが、オンラインで完結するようになる。
民間企業における「デジタル化」は、業務効率の向上や、人件費などのコスト削減が期待される。それを通して、より安い価格で高付加価値なサービスを提供するなど、競争力の強化を目的としてなされるはずだ。
それなのになぜ、電子化によって車検などの手数料が上がってしまうのか。一部SNSでは、同閣議決定を受けて「電子化したなら経費節減になるはずでは」「ユーザーの手間や負担が増えるのはDXとしておかしい」といった不満・疑問の声が挙がっている。国土交通省が9〜10月に募集したパブリックコメントでも、「手数料値上げに係る政令改正に反対」「車検証の電子化などによって事務作業の効率化や諸経費の削減が見込まれることから手数料を引き下げるべきではないか」といったものが目立った。
担当省である国土交通省は、こうした声が挙がっていることに対して、どう受け止めているのか。また、なぜ電子化が値上げにつながるのか。
国土交通省の担当者によると、SNSなどで挙がっている不満や疑問の声については「認識している」とのこと。
今回の値上げに関しては、道路運送車両法を挙げて説明した。「手数料の納付」に関して定めている同法第102条では、自動車の検査および登録手続きなどに関する手数料について「実費を勘案して政令で定める」としている。つまり、23年1月の手数料値上げは、車検証の電子化に伴うシステム開発で発生した経費を転嫁した結果、ということだ。
それならば、システム開発にかかった費用を回収した後は、手数料の値下げも考えられる。
この点について質問すると、「車検などで電子申請の利用率が高まれば、人件費などと総合的に勘案して、手数料が安くなることもあり得る」と回答した。「DX化を進めて利便性を高めていく姿勢は当然持っている。そのため、人件費の合理化なども進めている」(担当者)
一方で、システムの維持・運用にも費用が発生する。そのため、値下げについては、あくまで今後の可能性として否定しない、とのスタンスだった。
「電子化」とはいえ紙は残る
そもそも、「車検証の電子化」とはいうものの、完全なペーパーレスを実現するわけではない。