機能していない日本の雇用保険

機能していない日本の雇用保険

日本の社会保障で劣っているのは、生活保護だけではない。

たとえば雇用保険である。

雇用保険というのは、解雇や倒産など、もしものときのピンチを救ってくれる保険である。この雇用保険が充実したものであれば、少々景気が悪くても、人々は生活にそれほど影響を受けないで済む。

しかし、日本の雇用保険は、ありていに言って「使えない」のである。支給額や支給期間が、硬直化しており、本当に苦しい人にとっては、役に立たないのだ。

まず、中高年の支給期間が非常に短い。

20年勤務した40代のサラリーマンが、会社の倒産で失職した場合、雇用保険の失業手当がもらえる期間は、わずか9ヵ月である。いまの不況で、40代の人の職がそう簡単に見つかるものではない。なのに、たった1年の保障しか受けられないのだ。

職業訓練学校に入れば支給期間が若干、延びたりするなどの裏ワザはあるが、その期間内に職が見つからなければ、後は何の保障もない。


期間が短いうえ期間が終われば経済的にも見てくれない

他の先進諸国でも、失業手当の支給が切れてもなお職が得られない者は、失業手当とは切り離した政府からの給付が受けられるような制度を持っている。

その代わり公共職業安定所が紹介した仕事を拒否すれば、失業保険が受けられなかったり、失業手当を受けるために財産調査をされたり、などといった厳しい制約もある。

日本の場合、失業すれば雇用保険の失業手当は一定期間雇用されていた人ならだれでももらえるけれど、期間が短いうえ期間が終われば経済的には何の面倒も見てくれない。
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低所得者に手厚い欧米諸国

低所得者に手厚い欧米諸国

日本の社会保障が貧困なのは、金額だけではない。その内容も、非常にお粗末である。
たとえば「自由競争の国」とされているアメリカは、貧困者への扶助に日本の10倍を費やしている。しかもアメリカの扶助は、日本のように生活保護一本やりではない。バリエーションに富んだメリハリの利いた保護を行っているのだ。

アメリカには勤労所得税額控除(EITC)と呼ばれる補助金がある。

これは収入が一定額以下になった場合、国から補助金がもらえるという制度である。

EITCとはEarned Income Tax Creditの略である。課税最低限度に達していない家庭は税金を納めるのではなく、逆に還付されるという制度で、1975年に貧困対策として始まった。

年収と子どもの人数にもよるが、年収が1万ドル程度の家庭は、2500ドル程度の補助金がもらえる。子どものいない家庭への補助は少なく、子どものいる家庭へより手厚い制度となっている。

またひとり親の家庭では、現金給付、食費補助、住宅給付、健康保険給付、給食給付などを受けられる制度もある。

イギリスやフランスにも同様の制度がある。

このように、欧米では貧しく子どものいる家庭は、手厚い公的扶助が受けられる。豊かな者も貧しい者も子どもがいれば一律に受けられる。どんなに貧しくても月1万円程度しかもらえない日本の児童手当が、いかに粗末な公的扶助であるか、わかるというものだ。


健常者などに対してはフードスタンプなど食費補助

またアメリカは子どものいない健常者(老人を除く)などに対しては、現金給付ではなく、フードスタンプなど食費補助などの支援が中心となる。現金給付をすると、勤労意欲を失ってしまうからである。

フードスタンプとは、月100ドル程度の食料品を購入できるスタンプ(金券のようなもの)が支給される制度である。スーパーやレストランなどで使用でき、酒、タバコなどの嗜好品は購入できない。1964年に貧困対策として制度化された。

このフードスタンプは、申請すれば比較的簡単に受けられる。日本の生活保護よりは、はるかにハードルが低い。

2010年3月のアメリカ農務省の発表では、4000万人がフードスタンプを受けたという。実に、国民の8人に1人がその恩恵に預かっているのである。
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