ハマス殲滅を目指すイスラエルは、追撃の手を緩めない。ガザ地区北部を隈なく絨毯爆撃、さらに攻撃の矛先は南部地区へと広がっている。この泥沼の戦争を高みの見物しているのが北朝鮮・金正恩総書記。戦火を元手に“死の商人”として暗躍しているのだ。
ズラリと並べられた地雷、ロケットランチャー、自家製ドローン……。10月26日、イスラエル軍は、イスラム組織ハマスの襲撃を受けた南部のキブツで回収した武器を報道陣に公開した。その中には、弾頭に赤い線の入ったものも。イスラエル軍幹部の説明によれば、「ここにある武器の5〜10%はイラン製、10%が北朝鮮製と思われる」という。
全国紙外報部デスクが解説する。
「北朝鮮の対戦車ロケットランチャーに装塡されるロケット弾にRPG7、輸出名をF7といいますが、弾頭部分の赤い線は、F7の特徴と一致するものです。イスラエル軍と同様に、韓国軍参謀本部もハマスが使用している武器には北朝鮮製のものが含まれていると分析しています。しかも、武器のみならず、早朝の奇襲作戦や多数のロケット弾の使用など、韓国軍が想定している北朝鮮の戦闘と類似しており、戦術面でも北朝鮮が支援を行っている可能性があると見ています」
中東の戦火から遠く離れた極東アジアで、北朝鮮が隠然たる力を発揮しているというのだ。
他に、北朝鮮の軍事的な関与としては、イスラエルが国際的な非難を浴びつつも病院に攻撃を加えている根拠となっている全長約500キロにもわたる「地下トンネル」も同様だ。この「モグラ戦略」にも北朝鮮の技術供与が疑われているのだ。
こうした疑惑に対し、北朝鮮は「朝鮮中央通信」で「アメリカ政府の御用言論団体」が流した「根拠のないデマ」と主張している。とはいえ、実際に砲弾に記されたF7の赤い線や刻まれたハングルに関しては言い訳すらなされていないのだ。
イスラエルとハマスとの戦闘で、北朝鮮による関与の実態について「コリア・レポート」編集長の辺真一氏が解説する。
「北朝鮮はヨルダン川西岸側のアッバース・パレスチナ自治政府をパレスチナの代表と認めているので、公然とハマスの支持を表明しているわけではありません。だから直接のルートで公然と武器が渡っているということはないでしょう。ただ一方で、北朝鮮は心情的に反イスラエル・アメリカで同調するため、正式な外交関係にあるシリアやイラン、あるいはレバノンと両国の政治支援を受けているイスラム組織ヒズボラを通じて武器提供が行われていることは明らかです」
国際ジャーナリストの山田敏弘氏も同じ見立てだ。
「直接の支援はないにしても、実際、武器は見つかっているわけですからね。間接的に支援の動きがあるのでしょう」
蛇の道は蛇で、こうした「表のルート」以外に「闇のルート」が存在し、北朝鮮製の武器はいくらで流出しているというのだ。