非行少年の6割「家族から虐待を受けた」経験 23年犯罪白書
法務省は8日、非行少年の幼少期の逆境体験を初めて分析した2023年度版の犯罪白書を公表した。全体の約6割が家族から身体的な虐待を受けたと回答しており、法務省は一定数はトラウマを抱えた状態が続いていると分析。「複雑な家庭環境の早期把握と、保護者を含めた地域の支援が欠かせない」と指摘した。
分析では、21年に少年院に入所していた13〜19歳の少年591人(男子526人、女子65人)を対象に、幼少期に受けた虐待や家族の精神疾患・依存症、家庭内暴力といった逆境体験の有無を12項目に分けて調査した。1990年代に米国で始まった研究として知られ、該当項目が多いほど、成人期の心身の健康に影響を及ぼすとされている。
その結果、61・0%が「家族から殴る蹴るといった体の暴力を受けた」と回答し、43・8%が「家族から心が傷つくような言葉を言われ、精神的な暴力を受けた」と答えた。1項目以上該当があったのは87・6%に上り、男女別では10項目で男子より女子の該当率が高かった。
白書ではこうした逆境経験がトラウマにつながっている可能性があるとみて、矯正教育を担う職員にも少年たちの幼少期の逆境体験に対する配慮や理解が必要と指摘した。
◇刑法犯認知件数 20年ぶりに増加
また、白書によると、22年の刑法犯認知件数は戦後最少だった前年から5・8%増の60万1331件に上り、20年ぶりに増加に転じた。新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛の意識が薄れ、人流が増えて街頭犯罪が増加したことが一因とみられる。
犯罪類型別では、特殊詐欺の認知件数が前年比21・2%増の1万7570件に上った。被害額は同31・5%増の約371億円で8年ぶりに増加した。
再犯防止推進白書も8日、公表された。21年中に刑務所を出所し、22年末までに再び刑務所に入った「出所後2年以内の再入率」は14・1%で7年連続で低下。政府目標の16%以下を3年連続で達成した。【飯田憲】