財政拡大政策をやる必要性はない
岸田文雄政権の支持率が下がっています。10月30日に公表されたANN世論調査で、岸田内閣支持率は過去最低の26.9%でした。国民に低く評価されている中で、岸田総理がこの度発表した総合経済対策はあまりいい内容であるとは思いません。”酷い中身だ”という批判も聞こえてきます。岸田首相は国民に対して過度に迎合しています。
日銀は10月4日、日本経済の需要と供給力の差を示す「需給ギャップ」が2023年4〜6月期にマイナス0.07%だったとの推計を発表しました。これは13四半期連続のマイナスですが、マイナス幅は縮小しています。需給ギャップがほぼゼロな状況だといえます。需要不足がないところで、岸田首相はあえて17兆円という大規模の需要を付けると発表していますが、これは何のためにやるんでしょうか。不足があればそこに対してお金を出すのが普通の政策です。マクロ経済的に見て財政拡大政策をやる必要性はないでしょう。
たしかに国民生活は苦しくなっています。実質賃金が下がっているからですが、ただそんなのは当たり前の話です。円安で今まで100円で買えていたものが200円払わないといけなくなったからです。物の値段が上がれば、我々の購買力が吸い取られるので、その分生活レベルが落ちてしまいます。そして、同じことが今海外で起こっているのです。国民は困っているでしょう、しかしはっきりいって「海外ほどではない」のが現状です。日本の物価上昇率は現在3%ほどですが、IMFが10月10日に発表した世界経済見通しでは2023年の海外の消費者物価上昇率は6.9%と予測しています。
そもそも日本の経済実態はそんなに悪くありません
こういうと厳しく思われるかもしれませんが、はっきりいってこれは日本人が甘受しなくてはいけないレベルの話です。もちろん生活困窮者に対する支援は必要ですが、生活が大変だといっても、全体としては海外に比べれば程度の低い話で、非常事態でもなんでもないのに非常事態のようにふるまいお金をばら撒いているのが今の日本です。
そもそも日本の経済実態はそんなに悪くありません。輸出関連企業では最高益を出す企業も出ています。逆に世界では逆風が吹いている国も多く、正直日本にはささやかな追い風を受けているような状況と言えます。これに対してアメリカなどは「もっと日本しっかりやってくれ」と思っているのです。
かつて日本の半導体が強かった時にアメリカは日本の半導体を抑えようとしていました。しかし、今、アメリカは日本の半導体を強くしようしてくれてる。だからこそIBMがラピダスと組んだのです。日本にそんな追い風が吹いているのだから、それを思いきり生かそうとすべきです。
竹中平蔵「日本人の生活はそんなに苦しくなってないのに騒ぎすぎ。もっと頑張れ」さん 2023年11月15日 17時40分21秒
施しは社会の安定のためには必要なこと
さて、総合経済対策の中には期間限定の所得減税も含まれていました。
まず減税って何かというと税金を払っている人に対して「もっと頑張ってください」とお願いする制度です。所得を稼いで税金を払っている人は資源をうまく使っている人なので、そういう人たちにもっと頑張って動いてもらいましょう、と。ところが、今回の減税は「国民が生活に困っているから」という理由で実施されます。でも本当に生活に困っている人はそもそも税金をそんなに払っていなかったり、免除されたりしています。そうなると今回の減税政策は何の意味があるのでしょうか。
そういった批判を受けた政府ですが、今度は「低所得者たちには給付する」というのです。それでしたら、最初から全員に給付すればいいだけの話で減税など必要ありません。給付することに政策的には意味があるのです。給付とは「施し」です。施しは社会の安定のためには必要なことです。
今回の総合経済対策に関していえば、マクロ経済的には必要のない政策です。経済的にはやる必要はないが、政治的にやる必要があるならやっぱり給付をすればいい。そうしたほうが実施コストもかかりません。