自民党の麻生太郎副総裁の発言がまた物議を醸している。8日、福岡市で講演し、政治資金規正法の改正をめぐりこう主張したのだ。
「政治活動の基盤維持には一定の資金が必要だ」
「民主主義にはどうしてもコストがかかる」
「将来に禍根を残す改革は断固避けなければならない」
政治資金パーティー券購入者の公開基準を「5万円超」に引き下げた岸田首相に対する不満をあらわにしたということのようだが、9日、これに立憲民主党の泉健太代表が噛みついた。
「カネ集めの政治をやめるのが本当の改革だ。麻生さんの発言は、ずれている」
麻生副総裁の言う「民主主義のコスト」とは、秘書や事務所の経費、後援会活動を指すらしい。「広い地域をくまなく歩いて声を聞き、それを政策として形にしていかなければならない」とも発言していた。一見、もっともらしく聞こえるが、実はこれが「カネのかかる政治」の元凶だ。ある野党議員が本音を吐露する。
「陳情を受けるのは大事ですが、例えば選挙区でライバルの自民党議員が選挙区内の自治体それぞれに事務所と私設秘書を置けば、こっちも同じ数だけ事務所をつくらざるを得なくなる。資金力で劣るので自民党のようにふんだんに私設秘書を雇うことはできませんが、そうやってカネかけ合戦になっていくのです」
事務所と私設秘書でカネかけ合戦
この問題については、自民党の石破茂元幹事長も規正法改正案が衆院を通過した6日のぶらさがり取材で「事務所やスタッフの数を制限するとか、よりお金が少なくて済む制度の議論があってもよかった」と言及していた。
つまり、「カネのかかる政治」を是認する麻生発言は、事務所やスタッフをどれだけでも雇える金持ちボンボン世襲議員の驕りであり、世襲じゃない議員には、政治資金パーティー頼みを助長しているようなものなのだ。
「資金力のある人に有利な政治は、民主主義のコストではなく、民主主義の破壊。事務所やスタッフの人数など、不公平にならない枠をつくる必要がある。カネのかからない政治を目指さなきゃいけないのに、カネがかかるのを前提にしている時点で麻生氏は政治家として失格です。そもそも麻生氏は、経営者が愛人と噂された銀座のクラブの飲み代にまで政治資金を使っていたような人ですからね」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
麻生副総裁の資金管理団体「素淮会」の2022年分の政治資金収支報告書には、「会合費」が280件も記載され、総額は1934万円に上る。料亭や高級レストランなどがゴロゴロあり、毎月約161万円、毎週約37万円を使った計算だ。
それも民主主義のコストなのか。おまえが言うか、の戯言だ。