生活にかかるお金は10万円を超えないように…年金生活のリアル
「閉店して墨田区に引っ越したのは08年の秋です。働かなきゃ食べていけないから初めてハローワークに行きましたよ」
時代はリーマンショック直後で失業率が悪化していたが、調理技能があることが助けになって給食サービス会社に入ることができた。
配属されたのは大手町にある某大手企業の社員食堂、賃金は日給月給制。月収は時間外分と若干の手当を合わせて平均すると18万円ほど。
「6月と12月には慰労金も出ました。だけど年収はずっと240万円〜250万円というレベルでした。それでも社会保険に加入できたのはありがたかったですよ、自営業者は社会保障が薄かったから」
この給食サービス会社の定年は60歳だったが65歳まで契約社員で働き、その後の2年2ヵ月も1日4時間勤務のパートで働き続けた。
「パートのときは時給1,100円という条件でした。だけど新しく入ってきてもすぐに辞める人がいたり、本人の病気やケガ、家族の介護などで休む人が多かった。その穴埋めがかなりあったので月収は10万円前後になる月もありました」
今やっているクリーニング取次店のパートに転職したのは再度引っ越したから。
三村さんに訪れた奇跡…家賃がこれまでの3分の1ほどに
「運良く都営住宅の抽選に当選しまして。それで転居したんです」
都営住宅は募集があるたびに単身も可という区分に申し込みを続けていた。10年以上も落選続きだったが昨年の春の募集で奇跡的に当選したということだ。
「墨田区から調布市への転居でまったく知らなかった所だけど、家賃が格段に安いのが魅力でした」
都営アパートの家賃は1万8,000円ほど。以前住んでいた墨田区のアパートは1DKで5万3,000円だったから3分の1ほどで済む。これで楽になった。
「だけど土地勘がまったくない所だから半年ぐらいは戸惑いましたね。迷子になっちゃったこともあるのよ。でも物価は安いし静かな所だから暮らしやすいですよ」
その一方で通勤は無理だった。まず私鉄で新宿まで出る、次に地下鉄に乗り換えて大手町へだと1時間20分ぐらいかかる。それにパートの交通費は1出勤500円が上限なので定期券を買っても足が出てしまうというわけだ。
「コロナの影響で在宅勤務する人が増えたから社員食堂を利用する人も少なくなり、そんなに人はいらないという話も耳に入ってきました。アルバイトやパートから切られるのは目に見えていたから辞めることにしたんです」
今のパート仕事は高齢者事業団のような団体が斡旋・紹介してくれたもの。厨房で調理器具を使って立ち仕事をやるより身体は楽だ。
「今はパート収入と年金で細々と暮らしています。でも年金は少ないのよ、厚生年金と国民年金ですけど、厚生年金は現役時代の収入に連動しているでしょ。そんなに賃金の高い仕事じゃなかったし、加入期間の6割以上が国民年金だから仕方ないわよね」
生命保険会社や郵便局から個人年金の勧誘が来ていたが、保険料を払い続ける自信がなくためらってしまった。もしも月2万円、年間24万円ぐらい受給できるコースに入っていたらと思うと後悔する。
「具体的な年金額は約10万2,000円です。これにパートの5万5,000円ぐらいを加えた15万6〜7,000円が1ヵ月の全収入ということになります。余裕はありませんよ、だけどこれで暮らしていくしかありませんものね」
家賃と水道光熱費、その他食費など生活にかかるお金の合計が10万円を超えないようにやり繰りしているということだ。