ご遺族には直接、衷心より謝罪を申し上げました。責任は当時、ワタミの社長だった私にあります。和解までの道のりで、結果としてご両親を傷つけたこれまでの姿勢や認識、発言はすべて取り消し、重ねて謝罪いたしました。
提訴から和解まで2年もの時間がかかってしまいましたが、ご遺族との争いを長く続けたくないという思いは、正直申し上げて、ずっと持っていました。入社2カ月で命を絶たれたということは、すべて私の責任です。道義的には100%認めていました。
ですが、残業の考え方など法的な面ではしっかり話し合うべきだと考えていました。雇用問題について社会的な問いかけをしたつもりでした。
ただ、これ以上裁判を続けても、話し合いの妥協点が見つけられないという思いに至り、もう終わりにしようと和解を決断した次第です。今振り返ってみれば、もっと早く法的責任も認めたほうが、結果としてはよかったのかもしれないと思っています。
◆理念が曲解されてしまった
ワタミの理念として「地球上で一番たくさんの『ありがとう』を集める」ことを掲げ、社員が共有すべき価値観・使命感を理念集にまとめていました。この理念が独り歩きしてしまったことが、従業員の死という今回の大きな過ちを引き起こしてしまったのではないかと思っています。
「24時間365日死ぬまで働け」という理念集のメッセージも「働くことは生きることそのもの」という考え方を示したもの。誤解を生まないように「この言葉が、独り歩きすることを、私は恐れる」と明記しました。週休2日制などのルールは当然、守った上での話です。
社員がまだ300人程度だった2000年頃までならこんな出来事は起きなかった。私は全社員と手紙のやりとりをずっとしていました。家族構成から、どんな夢があるのか、恋人はいるのかということまで知っていました。社員が問題を抱えていればすぐに分かる。中小企業らしい、一番いい状況でした。
ですが、ワタミは急拡大しました・・・