同じ会社、同じ業界で働き続けることを考えれば、長期的な視野に立った業界の景気動向は重要だ。
「けど、私が働き始めた90年代半ば、パチンコ業界は1兆円産業と呼ばれ、市場規模も右肩上がりでした。それがまさか20年でここまで落ちるとは…」
遠くを見つめるような目をしながらそうつぶやくのは、元パチンコ店従業員の横山純一さん(仮名・44歳)だ。
「パチンコホールは高卒の私みたいな人間でも高収入を得られた職場でした。現に複数のアルバイトを転々とした後、24歳で地元ローカルチェーンに就職した私も最終的には店長に出世。年収は一番よかったころで850万円もありました」
順風満帆に見えたホール店長としての日々だったが突然終わりを告げることになる。店長を務めていたホールが閉鎖となったのだ。
「それが2年前のことでした。新台導入のコストは増える一方なのに、お客は減り続けて固定客がいるのは1円パチンコなどの低価格コーナーくらい。ウチのホールだけでも毎月数百万円の赤字を垂れ流している状態で、会社はパチンコ事業からの全面撤退を視野に入れていた。そのため、ホール従業員は大半がリストラ。店長の私も例外ではありませんでした」
ちなみにレジャー白書によると、パチンコ業界の売上高は29.5兆円('04年)→18.8兆円('13年)とわずか10年で36.5%も減少。これほどのペースで市場規模が縮小した業界は他にはなく、全国のパチンコホールの数も1万5165店('05年)→1万1627店('14年)と3500店弱が閉店。一説には8万人以上が職を失ったと言われる。
「いざ求職活動を始めてもパチンコホールの勤務経験は、業界外からの評価はハッキリ言って低い。おまけに当時42歳でしたから年齢的に書類の時点でNG。店長時代は30名近いスタッフを束ねる立場にいましたが、それすらも評価の対象にはなりませんでした。今はビルの警備員で年収は280万円。2年前からは想像もできないほどの落ちぶれっぷりです(苦笑)」